保険の歯科材料

保険で使用される「歯科金属」について

保険適用の診療で使用される歯科金属は、通常「金銀パラジウム合金」と呼ばれる合金(いわゆる銀歯)が使用されています。金銀パラジウム合金は、金とは違い、安価で、健康保険が使えるというメリットがあります。

しかし近年、この銀歯に関して、審美性の問題や、金属アレルギーの問題などから、自由診療でもセラミックの歯に取り替えたいといったご要望が増加傾向にあります。ここでは歯科金属についてご説明いたします。

金銀パラジウム合金

「金銀パラジウム合金」は、金、パラジウム、銀、銅など、複数の金属からなる合金です。ただ、パラジウムという金属は、ヨーロッパなどの歯科医療先進国では使用禁止になっている国もあります。金属は、口腔内の過酷な環境の中で、イオン化・溶出し、徐々に体内に取り込まれていきます。そして、年月が経過してから金属アレルギーによる全身症状が出てくるといったケースがあります。この、パラジウムという金属は「リンパ球幼若化テスト」という金属アレルギー検査で、半数程度の人に陽性が出るのです。そして、ドイツでは、保健省が歯科業界に対し、「幼児及び妊婦に、銅を含有するパラジウム合金と水銀・銀アマルガム合金を使用しない」という勧告を行なったという経緯もあります。そして、パラジウムが体に与える悪影響を考慮してパラジウムフリーの金属を使うことを強く推奨しています。

金銀パラジウム合金(金パラ)
銀歯の詰め物

水銀アマルガム

主に1970年代くらいに特に多く使用されていた充填物に「水銀アマルガム」があります。水銀アマルガムは、銀とすずの合金に銅や亜鉛を添加した粉末を水銀で練り込んだ充填物で、日本国内でも広く使用されていました。しかし、アマルガムは水銀を使用することから、健康に関する様々な問題が起きるのではないかといった議論も少なくなかった材料で、イギリスの厚生省では、「妊婦にアマルガムの詰め物をしないように」といった内容の警告を発しており、スウェーデンにおいても、政府が同様の発表をしています。

水銀アマルガム
劣化した水銀アマルガム

土台にも金属が使用されてるケースが少なくありません

いわゆる差し歯は、かぶせ物をするときの治療です。歯の根に「コア」と呼ばれる土台を差し込むのですが、保険治療で使われてきた金属性の土台のことを「メタルコア」といいます。メタルコアは金属ですので、強度も耐久性も高いのですが、噛む力が加わった際、歯の根の部分が割れてしまう場合もあります。この歯根破折を起こすと、通常、抜歯になってしまいます。また、金属成分が歯ぐきにしみこんで、歯茎が黒ずんでしまったり(メタルタトゥー)、歯茎がやせることで、金属が見えてしまう(ブラックマージン)を起こしたり、金属アレルギーの原因になる場合もあります。

メタルコアによる歯根破折
メタルコアによるメタルタトゥ―

セラミックの歯にも金属が使われているケース

同じセラミックの歯でも金属が使われていることがあります。これを「メタルボンド」といいます。メタルボンドは表側はセラミックでも、裏打ちには金属が使用されています。強度的には非常に強いのですが、裏打ちに使われている金属がイオン化・溶出する可能性があり、金属アレルギーを引き起こしたり、歯茎にメタルタトゥ―を作ってしまったりしてしまうこともあります。また、セラミック素材の透明感を犠牲にしてしまう側面もあり、メタルボンドをやめて、一切金属を使用しないセラミックの歯による「メタルフリー治療」を希望される方が増加傾向にあります。 

メタルボンド
裏側に使用されている金属

保険で使用されるレジン(プラスチック)について

保険治療では、歯科金属の他にプラスチックも使用されます。前歯の場合には、金属の被せ物にしたくない方がほとんどですので、金属の被せ物に表面はプラスチックを貼り付けた「硬質レジン前装冠(こうしつれじんぜんそうかん)」が使用されます。費用面では安価に済みますが、プラスチックは吸水性があるため、経年劣化によって黄ばんでくる特徴があります。特に前歯の場合、黄ばみでお悩みの方が少なくありません。このようなケースでは、自由診療の「セラミック」の歯を希望される方が増加傾向にあります。

硬質レジン前装冠

「硬質レジン前装冠」は、金属の被せ物に、表面にプラスチックを貼り付けたものです。プラスチックはその特性として「吸水性」があり、歯垢や歯石が付着しやすいことや、経年で劣化したり、黄色や茶褐色にく変色したり、割れや、歯肉の退縮などにより内側の金属が見えるようになってしまったり、金属がイオン化・溶出し、歯茎に黒いシミが沈着する場合もあります。 審美性の気になる方はセラミックへの交換をお勧めします。 

経年で黄ばんだ硬質レジン前装冠のイメージ

経年で黄ばんだ硬質レジン前装冠のイメージ

レジン充填(じゅうてん)

レジン充填(じゅうてん)とは、むし歯を削った後にレジンという歯科用プラスチックのペーストを詰め、その後硬化させる治療法です。

健康保険が適用になることから、レジン治療は多く行われています。

しかしデメリットとしては、時間が経つと変色して、見た目が悪くなることがある点です。